海外不動産投資でローンを組む方法5選!④海外不動産を担保にする(国内金融機関編)

海外不動産への投資を検討する中で、資金調達の点で以下のような疑問を持つことはないでしょうか?

 

・現金一括でなければ海外不動産は買えないのでは?

・海外不動産投資のローンを組める金融機関はあるの?

・どんな資産を担保にできるの?

 

従来は海外不動産への投資は現金一括でしか行えないと思われがちでしたが、近年では海外不動産への投資に対して融資をする金融機関が増えてきています。

様々な資産を担保にして融資を受けることで、手元の現金を切り崩さずに海外不動産に投資をすることが可能です。

 

本記事は「海外不動産投資でローンを組む方法5選」の記事群の4本目です。全5本の記事をお読みいただくことで、海外不動産に投資する際の資金調達の方法についての網羅的な理解を習得していただくことができるでしょう。

 

現金一括での購入という方法以外にも海外不動産に投資をする方法があるということをご理解いただき、海外不動産への投資に役立てていただければ幸いです。

 

 

海外不動産を担保にローンを組んで海外不動産に投資する(国内金融機関編)

 

既に保有している不動産または購入予定の不動産を担保にして組むことができるローンを一般的に「不動産担保ローン」といい、多くの国内金融機関が商品として提供しています。

 

担保にできる不動産の条件(所在エリア等)や融資上の条件(金利、融資期間等)は金融機関によって大きく異なりますが、購入しようとしている、または既に所有している海外不動産を担保にして融資を受けるというスキームの大枠は変わりません。

 

不動産担保ローンの融資上限額は、不動産評価額または不動産取得額に「掛け目」というディスカウント値を乗じて算出されるのが一般的です。

 

掛け目は不動産に限らず金融資産を担保とする場合に適用され、当該資産の流動性、時価総額、投資対象、格付け等を勘案して決められており、安全資産(現金や先進国の国債等)ほどそのパーセンテージが高くなります。金融資産には価格変動があるため、担保とするにあたっては価格下落を想定し、価値が割り引かれて評価されるためです。

 

既に保有している海外不動産または購入予定の海外不動産を担保に国内金融機関から資金調達ができるため、手元の資産を売却・現金化して外貨を買い、現金一括で購入するという方法をとらずとも海外不動産に投資ができます。

 

長期保有用の海外不動産をまとまった規模で保有している、または担保価値の高い海外不動産を購入予定であり、それらを売却せずに有効活用したいという方は一度検討してみる価値のある資金調達方法の一つといえるでしょう。

 

メリットと注意点

 

海外不動産を担保にしてローンを組むという方法には、どのようなメリットおよび注意点があるのでしょうか?

それぞれについての重要なポイントを解説します。

 

メリット

 

メリットは以下の3つです。

 

・既存の家賃収入を維持したまま所有不動産を活用できる

・担保価値が安定的

・国籍が融資において不利にならない

 

不動産は有価証券(株式や債券)と比べる一般的に安全資産として評価されやすい傾向があるため、担保にして融資を組む際のメリットを享受できる可能性が高いといえます。

 

・既存の家賃収入を維持したまま所有不動産を活用できる

既に保有しているまたは購入予定の賃貸不動産を担保に入れたとしても、家賃収入は変わらず得続けることができます。

 

売却する予定が当面ない長期保有目的の不動産を担保にするのであれば、それまでと大きな変化がない状態で賃貸経営を続けていくことができるということです。

 

不動産は有価証券のような部分売却(保有している100株のうち10株だけを売却する等)がしにくく、売却時には手間(登記移転手続、契約手続等)とコスト(仲介手数料、税金、司法書士への報酬等)がかさむため、所有不動産を売却することなく資産規模の拡大ができるという点は大きなメリットといえるでしょう。

 

・担保価値が安定的

アメリカ、ヨーロッパ、アジアの先進国の不動産価格は1990年から長期的に横ばいないし右肩上がりで安定推移しています。

 

アメリカ同時多発テロ(2001年)、リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)といった世界経済を揺るがす大きなネガティブイベントが発生しても、先進国の不動産は長期的に価値を高めているということです。

 

価格が安定推移しているということは担保価値が安定的であるということであるため、「追加担保」を求められるリスクを抑えることができます。

 

追加担保とは、ローンを組む際に担保としている資産の価値が下落した場合に担保価値を補う目的で金融機関から追加で求められる担保のことです。追加担保を求められた場合には、現金、有価証券、不動産等の資産を追加で担保として金融機関に差し出さなければなりません。

 

一般的に不動産は有価証券よりも価格が急激かつ大きく変動するリスクが低いため、追加担保を求められるリスクが顕在化する可能性は不動産の方が低いでしょう。有価証券を担保とした場合の担保割れリスクについては、「海外不動産投資でローンを組む方法5選!②株や債券を担保にする」をご参照ください。

 

不動産投資は年単位の中長期的な資産運用になることが想定されるため、追加担保を求められるリスクを軽減できるという点は大きな安心材料でありメリットでしょう。

 

・国籍が融資において不利にならない

日本人として国内金融機関を利用する場合、融資における審査や貸出条件等において国籍が不利に働くことはありません。

一方で、海外では金融機関によっては外国人への融資をしていない場合や外国人への貸出においては金利が高くなるなど貸出条件が良くない場合もあります。

 

ローンの金利が高いとイールドギャップが下がり、収益性が悪化するため投資効率が落ちてしまいます。

イールドギャップとは、実質利回りとローン金利との差のことで、投資効率を表す重要な指標の一つです。

 

年間の家賃収入が1,000万円、諸経費が200万円、価格が1億円の物件に投資する場合を例に、イールドギャップが投資の収益性に与える影響をみていきましょう。

本投資の実質利回りは8%((1,000万円-200万円)/1億円=8%)となります。ローンの金利が1%の場合はイールドギャップが7%ですが、3%の場合は5%、5%の場合は3%にまで下落してしまいます。

 

海外不動産を担保にしつつ国内金融機関を利用できるのは、国籍による融資上のハンディキャップを排除できるという点でメリットがあるといえるでしょう。

 

 

注意点

 

注意点は以下の4つです。

 

・物件の所在地によっては担保にできない場合がある

・担保にした不動産が拘束される

・融資を受ける以上、金利がかかる

・為替リスクがある

 

・物件の所在地によっては担保にできない場合がある

金融機関によって異なりますが、担保にできる不動産には所在地の条件があるのが一般的です。

 

具体的には、担保となる海外不動産の担保能力をその金融機関が判断できるエリアに所在していること等が条件となります。例えば、アメリカのテキサス州またはニューヨーク州に所在する物件、ハワイ州のオアフ島に所在する物件のみが担保となり得るといった条件がついている場合が実際にあります。

 

海外不動産の中でも所在地によっては担保にできない場合があるということを認識しておきましょう。

 

・担保にした不動産が拘束される

担保となった不動産は自分の資産であり続けるものの、ローンを完済するまでは売却することができなくなります。物件の買い替えをしたり、現金化したりする際に制約を受ける可能性があるという点は認識しておきましょう。

 

不動産投資は年単位の中長期投資になることが想定されるため、中長期的な資金計画を立てたうえでどの物件であれば担保にすることができるかという点を熟慮する必要があります。

 

・融資を受ける以上、金利がかかる

融資を受ける場合、大なり小なり金利の支払いが発生します。

 

投資する不動産の利回りが高くても、金利がかかれば実質的な投資パフォーマンスはその分低下するため注意が必要です。

 

投資する不動産の利回りと支払う金利の利率のバランスを考慮して、その投資における収益性を総合的に判断しましょう。

 

一方、現金一括で購入する場合は金利がかからないため、その分のコストとリスクを抑えることができます。現金一括で購入する方法については、「海外不動産投資でローンを組む方法5選!①現金一括で購入または現金を担保に融資を受ける」をご参照ください。

 

・為替リスクがある

為替リスクとは、為替レートの変動によって外貨の価値が変動するリスクのことです。

 

国内金融機関からの融資および返済は日本円で行われます。一方で物件購入時の支払いおよび家賃収入の授受は外貨で行われるため、物件購入時および返済時に外貨と日本円を両替しなければいけません。

 

両替の際に円高が進行していると外貨の対円価値が目減りしてしまうため、調達した資金で不動産を購入できなくなったり家賃収入の中から返済ができなくなったりするリスクがあるということです。

 

為替リスクをヘッジするために、海外不動産からの家賃収入以外の資金(日本円で得られる国内不動産からの家賃収入や給与収入等)で返済を行うというのも選択肢の一つです。

 

海外金融機関から融資を受ける場合は融資も返済も外貨で行うことになるため、為替リスクをヘッジすることができます。海外の金融機関から融資を受ける方法については、「海外不動産投資でローンを組む方法5選!⑤海外不動産を担保にする(海外金融機関編)」をご参照ください。

 

向いている方・向いていない方

 

海外不動産を担保にしてローンを組むという方法に向いている方・向いていない方という点について、投資の目的やスタイルの観点から解説します。

 

■向いている方

■向いていない方

 

 

向いている方

 

海外不動産を担保にして国内金融機関でローンを組むという方法に向いているのは、アメリカなどカントリーリスクが低い先進国の不動産を所有している、または購入予定の方です。

 

ニューヨーク州、テキサス州、カリフォルニア州、ハワイ州といったアメリカの中でも有数の都市圏のみを担保対象にしている金融機関もあるため、どのエリアの物件を所有しているかが融資を受けるうえでの生命線といえそうです。

 

 

向いていない方

 

海外不動産を担保にして国内金融機関でローンを組むという方法に向いていないのは、カントリーリスクの高い新興国の不動産を所有している、または購入予定の方です。

 

金融機関によっては先進国の一部の地域以外の不動産は担保として受け付けてもらえない可能性があるという点から、上記のような方には適さない資金調達方法といえるでしょう。

 

まとめ

 

海外不動産は現金一括で購入するという方法だけではなく、ローンを活用するという手段をとることもできます。

 

本記事で紹介した海外不動産を担保としてローンを組むという方法は、金融機関が担保として評価してくれるエリアの不動産を長期保有目的で所有しており、中長期的な資産運用を考えている方に適した資金調達方法です。

 

ご自身の資産状況や投資の目的等を勘案して、どのような方法で資金調達をするが最も合理的かをプロの意見も聞きながら客観的に判断するのが、海外不動産投資を成功に導く近道になるかもしれません。

 

なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等については、お気軽にお問い合わせください。