日本での不動産投資を検討するにあたり、以下のような点に疑問を持つ投資家は少なくないでしょう。
・不動産会社からいくつかの物件を勧められたが、投資判断の基準が分からない
・都心と地方のどちらの物件を買うか悩んでいる
・都内で物件を探しているが、エリアごとの特徴を知りたい
初めて日本で不動産投資をする、または日本での不動産投資の経験が浅い投資家にとって土地勘のない日本でのエリア選びは非常に難しいです。
本記事では、日本での不動産投資でエリア選定をする際にチェックすべきポイントを5つ紹介します。
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1-物件選びはエリア選びから!エリア選定時のチェックポイント5つ
┗1-1人口推移
┗1-2不動産売買の成約価格の推移
┗1-3空室率
┗1-4平均利回り
┗1-5どのような世帯からの賃貸需要があるか
2-まとめ
日本で不動産のエリア選定をする際にチェックすべきポイントは以下の5つです。
■人口推移
■不動産売買の成約価格の推移
■空室率
■平均利回り
■どのような世帯からの賃貸需要があるか
中長期的な不動産価格と賃貸需要の動向を見定めたうえで、自分の投資目的に合致したエリアの物件に投資できるように、まずはエリア選びを慎重に行いましょう。
人口推移とは、そのエリアにおける過去の人口および将来の予測人口を時系列に並べたデータのことです。
不動産投資は家賃を払ってくれる入居者がいてはじめて完成する投資スキームであることから、自分のお客様(入居者)となり得る人が将来に渡って存在し続けるのかを判断するために有効なデータといえます。
日本においては人口減少が進んでおり、国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の地域別将来推計人口」によれば、2030年以降は全都道府県において人口が減少に転じるという予測がされています。
人口の多さが不動産投資マーケットの活況さに直接的な影響を及ぼすともいえるため、人口推移を確認し、中長期的に人口が増えるまたは減らないエリアを厳選することが重要です。
エリアごとの人口推移を調べる方法としては、市や区などのホームページを参照するのが有効な方法の一つです。
不動産売買の成約価格の推移とは、そのエリアにおいて過去に売買された不動産の成約価格(実際に取引が成立した価格)の動向のことです。
売り出された価格と実際に取引が成立した価格には、価格の交渉や改定等によるギャップが生じることが多いため、売出価格よりも成約価格の方がよりマーケットの実情を把握できるデータといえます。
成約価格の推移を確認することで、そのエリアにおける不動産価格のトレンドや上昇および下落の割合(年率)を知ることができ、以下2つの点で役に立つ可能性があるでしょう。
・中長期的な不動産価格の推移を概算で予測することができる
・価格下落が続いているエリアへの投資を回避することができる
年率約3%程度で成約価格が上昇しているエリアにある1億円の物件であれば、1年後には1億300万円、2年後には1億609万円になる可能性があるという1つの仮説を立てることができます。
エリアごとの不動産成約価格の推移を調べる方法としては、レインズデータライブラリーの「月例マーケットウォッチ」を参照するのが有効な方法の一つです。
空室率とは、そのエリアにおける空室の割合のことです。空室率は空室数を全住戸数で割ることで求められ、100戸のうち10戸が空室である場合の空室率は10%(10戸/100戸)となります。
空室期間中は家賃収入が途絶えるため、空室率はキャッシュフローに直接的な影響を与え、不動産投資のパフォーマンスを大きく左右する非常に重要な要素の一つです。
空室率の高さによってキャッシュフローにどの程度の影響が出るのでしょうか?同じ価格、利回りの2つの物件でシミュレーションしてみます。
<設定条件>
・物件価格 : 5000万円
・利回り: 8%
・満室時の年間家賃収入 : 400万円
・空室率は以下の表のように異なる
・ローン返済およびその他諸経費は考慮しない
空室率 | 実質家賃収入(万円) | 差額(万円) | |
---|---|---|---|
物件A | 5% | 380 | 60 |
物件B | 20% | 320 |
本事例においては、空室率に15%の差があることでキャッシュフローに年間60万円(月間5万円)もの差が生まれます。
空室率が高い(空室が多い)エリアの物件を購入すると、家賃収入を思うように得られず、最悪の場合はローンを返せなくなり強制的に物件を売らざるを得なくなってしまうリスクがあるため、そのエリアの空室率は投資前に必ず確認しておきましょう。
人口が少ないエリアや賃貸住宅が供給過多なエリアにおいては空室率が高くなる傾向があるため、空室率を確認する際はそのエリアの人口推移および賃貸住宅の供給状況を併せて確認するのが得策です。
エリアごとの空室率を調べる方法としては、LIFULL HOME’Sが提供する「見える!賃貸経営」を参照するのが有効な方法の一つです。
平均利回りとは、そのエリアにおける投資用不動産の利回りの平均水準のことです。
平均利回りを把握することで、以下の3つのような投資上のメリットを享受できます。
・そのエリアにおけるリスクの高さを把握できる
・平均利回りを基準にエリア選びができる
・検討している物件の条件が相場と比べて妥当な否かを判断できる
●そのエリアにおけるリスクの高さを把握できる
不動産投資に限らず、投資においてリスクとリターンは概ね比例する関係にあります。不動産投資において高利回りというハイリターンが期待できる物件は、空室リスクや修繕リスクといった点においてハイリスクである可能性が高いため、平均利回りが高いエリアの物件やエリア内の平均利回りよりも高く売り出されている物件には注意が必要です。
具体的には、人口減少が続いているエリアにあるため空室リスクが高い物件や、設備交換やメンテナンスが行き届いておらず修繕リスクが高い築古物件はエリアの平均利回りよりも高く売り出されている傾向があります。
利回りのみに目を奪われず、投資全体でのリスクとリターンを比較して投資エリアを選びましょう。
●平均利回りを基準にエリア選びができる
投資エリアを選定するにあたって、自分が求める利回りとエリアごとの平均利回りとを照らし合わせるという方法も選択肢の一つです。
例えば、10%以上の高い利回りを狙うために一定のリスクをとって地方や郊外に投資をする、3%程度の利回りでもいいので安定資産を求めて都心に投資をするというような投資判断が、エリアごとの平均利回りを把握することでできるようになります。
●検討している物件の条件が相場と比べて妥当な否かを判断できる
不動産業者に提示された物件を検討する際にも平均利回りが非常に重要な参考指標の一つとして機能します。
利回りは年間の家賃収入を物件価格で割ることで求められるため、利回りがエリアの平均値と大きく乖離している場合は物件価格または現行家賃が妥当ではないという判断ができるためです。
その物件の利回りが平均利回りよりも低い場合、現行家賃が相場よりも安いか物件価格が相場よりも高い可能性があり、物件を割高な価格で購入してしまうことになります。
物件を適正な価格で購入するためにも、エリアの平均利回りの理解が重要であるということです。
エリアごとの平均利回りを調べる方法としては、LIFULL HOME’Sが提供する「見える!賃貸経営」を参照したり、収益不動産を扱うポータルサイト(楽待、健美家、アットホーム等)で周辺の類似物件の利回りと比較したりするのが有効な方法です。
どのような世帯からの賃貸需要があるかを理解することは、そのエリアにおいて最も賃貸住宅を求めている世帯の属性(家族構成、年齢、職業等)を理解することです。
不動産投資は入居者がいてはじめて完成する投資スキームであるため、立地や家賃等の条件がいい物件であっても賃貸需要がなければ入居者が見つけられず、投資として不完全といえます。
賃貸需要の理解において具体的にチェックすべきポイントは以下の3つです。
・最も賃貸住宅を求めている世帯
・最も求められる間取り
・特定の賃貸需要に依存していないか
そのエリアで最も賃貸住宅を求めているのが単身者かファミリーか、男性か女性か、若者か中高年者かによって最も賃貸需要のある間取り、求められる設備、必要な生活インフラが大きく異なります。
最も賃貸住宅を求めている世帯の具体的なイメージから逆算して、どのような物件が最も賃貸需要にリーチできるかを考えることが重要です。
賃貸需要が特定の世帯に依存しているエリアは空室リスクが突然に急上昇するおそれがあるため、注意が必要です。
特定の賃貸需要に依存しているエリアの具体例として、学生街や工業団地などが挙げられます。これらのエリアにおいては大学のキャンパス移転や工場の撤退等によって賃貸需要が突如激減するリスクがあります。
学生街や工業団地などは、根強い賃貸需要があるエリアであると捉えるのではなく、いつ賃貸需要がなくなるか分からないエリアであると捉えるのが得策でしょう。
日本の不動産投資においては投資対象とするエリアによって投資手法、狙うべきキャッシュポイント、リスク等の要素が大きく異なるため、エリア選びは物件選びと並ぶ最重要ポイントといえます。
エリアごとの特徴を理解し、自分の投資目的と照らし合わせてどのエリアおよびどの物件に投資をするかを判断することで理想通りの不動産投資ができるでしょう。
なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等についてはお気軽にお問い合わせください。