5つの項目で比較!日本の不動産投資は一棟物件?区分マンション?

日本での不動産投資で物件選びをするにあたり、一棟物件と区分マンションのどちらに投資するかを決める際に以下のような点で迷うことはないでしょうか?

 

・それぞれのメリットとデメリットは?

・自分の投資方針にマッチするのはどっち?

・最終的な投資判断の基準は?

 

本記事では、日本の不動産に初めて投資をする人でも一棟物件と区分マンションのどちらに投資するかの判断がスムーズかつ合理的にできるように、それぞれの特徴やメリット・デメリットを5つの項目で比較していきます。

 

 

【目次】

 

1-5つの項目で比較!日本の不動産投資は一棟物件?区分マンション?

┗1-1価格・利回り推移

┗1-2リスク分散のしやすさ

┗1-3管理手間の多さ

┗1-4オーナーの裁量権の大きさ

┗1-5コンバージョンのしやすさ

2-まとめ

 

 

5つの項目で比較!日本の不動産投資は一棟物件?区分マンション?

 

日本の不動産投資において一棟物件と区分マンションのどちらに投資するかを判断する際の比較項目として、以下の5つを挙げます。

 

■価格・利回り推移

■リスク分散のしやすさ

■管理手間の多さ

■オーナーの裁量権の大きさ

■コンバージョンのしやすさ

 

 

■価格推移・利回り推移

 

価格・利回り推移の項目では、2012年から2021年までの約10年間における一棟物件と区分マンションの価格および利回りを比較します。

 

収益物件数が最も多く、日本最大の不動産投資サイトである楽待の発表によれば、一棟アパート・一棟マンション・区分マンションぞれぞれの平均価格および平均利回りは2012年から2021年までの約10年間でそれぞれ以下のように推移しています。

 

・一棟アパート

出典:楽待不動産投資新聞

 

価格は2012年から右肩上がりに約27%も上昇を続けた後に2016年でピークを迎え(上図①)、2018年以降は緩やかな下落傾向にあります(上図②)。

 

利回りは2012年から2016年まで緩やかに下落を続け(上図③)、2017年以降は9%台を横ばいで推移しています(上図④)。

 

価格および利回りともに2020年以降は横ばいで推移していることから、一棟アパートは価格が下げ止まり落ち着いている状況といえそうです。

 

一棟アパートに投資をするにあたっては、大きなキャピタルゲイン(売却益)を狙うよりも、中長期で保有してインカムゲイン(家賃収入)を得るという投資戦略がいいかもしれません。

 

・一棟マンション

出典:楽待不動産投資新聞

 

価格は2012年から右肩上がりに約37%も上昇を続けた後に2016年でピークを迎え(上図①)、2018年以降は強めの下落傾向にあります(上図②)。

 

2021年には2012年の上昇が始まる前の付近まで価格下落が進んでおり、2020年以降も強めの下落が続いていることから、融資情勢等のマーケット変化がない限りは今後も価格下落が進行する可能性は大いにあると評価できるでしょう。

 

利回りは2012年から2016年まで緩やかに下落を続け(上図③)、2017年以降は7〜8%台を横ばいないし微増しながら推移しています(上図④)。

 

一棟マンションに投資をするにあたっては、価格下落のリスクを十分に理解したうえで、価格交渉等によって相場よりも安く購入する、購入後にフルリフォームをして価値を上げるといった工夫が求められそうです。

 

・区分マンション

出典:楽待不動産投資新聞

 

価格は2012年以降、一度も大きな下落に見舞われることなく安定的な右肩上がりで価格が推移しており、2021年までに約2倍にまで値上がりしました(上図①)。

 

区分マンションの中でも特に都心部の物件には、金融緩和による余剰マネーが世界中から流入していることが価格上昇の一因であると考えられます(2021年7月25日の日経新聞の記事より)。

 

都心部の物件であれば長期的に賃貸需要が見込まれるうえ、今後も国内外からの投資マネーに価格が下支えされることが想定されるため、価格上昇が継続する可能性は大いにあると評価できるでしょう。

 

利回りは2012年以降、価格と反比例する形で下向きに推移しており、2021年までに約6%(13%→7%)も下落しました(上図②)。

 

価格の上昇が今後も継続すると仮定すると、利回りは下落を続けるという可能性も考えられます。

 

区分マンションに投資をするにあたっては、高い利回りよりもキャピタルゲインを狙うという投資戦略の方が合理的といえるかもしれません。

 

 

■リスク分散のしやすさ

 

リスク分散のしやすさの項目では、不動産投資における以下の各リスク分散のしやすさについて一棟物件と区分マンションを比較します。

 

・空室リスク

・物件価格および家賃の下落リスク

・災害リスク

・事件事故リスク

・周辺環境の変動リスク

 

結論として、いずれのリスクにおいても最もリスク分散をしやすいのは、賃貸需要が旺盛な区分マンションを複数エリアに分散投資することです。

 

本結論の理由は、区分マンションの方が一棟物件よりも投資単価を安く抑えられるため、同じ予算でもより多くの物件を分散して保有できるためです。

 

5,000万円の予算で不動産投資を行う場合を例にシミュレーションをしてみましょう。

 

一棟物件に投資をする場合、郊外の物件2棟に分散するのが現実的な限界であると考えられます(日本全国を探せば1,000万円以下の一棟物件もありますが、地方の築古物件が多いため初心者が投資するにはハイリスクです)。

 

2物件にしか分散ができないということは、エリアの分散も2つまでしかできないということであるため、人口減少、地震、賃貸需要の変化といったエリア全体に影響を及ぼす要因へのリスク対策が不十分といえるでしょう。

 

区分マンションに投資をする場合、5,000万円の予算であっても東京23区内や大阪市内といった人口が多く賃貸需要の旺盛な都市部の物件5戸以上に分散することが可能です。

 

5つ以上のエリアに分散ができるということは、エリア全体に影響を及ぼす要因へのリスク対策も十分にできます。東京23区内に2件・大阪市内に2件・名古屋市内に1件・福岡市内に1件というように、日本全国の主要大都市に分散投資をするということもできるということです。

 

限られた予算の中で最大限にリスク分散を図ることを考えるならば、区分マンションに投資する方が合理的といえるかもしれません。

 

 

■管理手間の多さ

 

管理手間の多さの項目では、物件購入後の運用にかかる時間と労力について一棟物件と区分マンションを比較します。

 

物件購入後の運用にかかる時間と労力は、一棟物件の方が区分マンションよりも多くかかるのが一般的でしょう。

 

一棟物件の管理手間の方が多い最大の理由は、物件運用に関する全ての意思決定をオーナー個人で行わなければいけないということです。運用実務の大部分(修繕手配、入居者対応等)を管理会社にアウトソーシングすることはできますが、意思決定そのものは全てオーナー個人がしなければいけません。

 

区分マンションには管理組合という各住戸のオーナーで構成される組織があり、管理会社によるサポートのもとで総会や理事会という会議が定期的に行われます。総会や理事会には全オーナーが必ず出席しなければいけないわけではないため、物件運用に関する意思決定を管理組合に委ねることも可能です。

 

物件運用に関する事項の議論や意思決定は管理会社および管理組合で行われるため、各住戸のオーナー個人が意思決定しなければいけない事項が一棟物件よりも大幅に少ないということです。

 

海外などの遠隔地から物件の運用を行うことを考えている投資家は、管理手間を少しでも軽減するため区分マンションに投資する方が合理的といえるかもしれません。

 

 

■オーナーの裁量権の大きさ

 

オーナーの裁量の大きさの項目では、物件の運用方針に関する意思決定におけるオーナーの裁量権の大きさについて一棟物件と区分マンションを比較します。

 

オーナーの裁量権の大きさは、一棟物件の方が区分マンションよりも圧倒的に大きいといえるでしょう。

 

一棟物件は敷地および建物全体、付帯施設(駐車場、駐輪場等)まで全てオーナー個人の所有物であるため、物件全体についての意思決定をオーナーの一存で行うことができるためです。

 

区分マンションでオーナー個人が裁量権を持っているのは、原則として所有している部屋の内側のみです。それ以外の箇所についての意思決定は管理組合の決議によって行われるため、オーナーの裁量権は一棟物件に比べるとごくわずかであるといえます。

 

外壁塗装の塗り直し、新しい設備(宅配ロッカー、モニター付きインターホン等)の導入、大規模修繕の実施時期といった意思決定をオーナー個人のみで行える(一棟物件)か、各住戸のオーナーの合意形成が必要(区分マンション)かという点が、一棟物件と区分マンションの大きな差異の一つです。

 

物件運用を自ら主導したい投資家は一棟物件、管理組合に委ねたい投資家は区分マンションに投資するのが合理的といえるかもしれません。

 

 

■コンバージョンのしやすさ

 

不動産投資におけるコンバージョンとは、建物の用途変更のことで、オフィスを住居にしたり住居を宿泊施設にしたりする変更をいいます。

 

コンバージョンのしやすさの項目では、物件運用中ないし売却時におけるコンバージョン(用途変更)のしやすさについて一棟物件と区分マンションを比較します。

 

コンバージョンは、一棟物件の方が区分マンションよりも圧倒的にしやすいといえるでしょう。

 

一棟物件ではオーナー個人の決定権が敷地および建物全体、付帯施設にまで及ぶため、以下のようなコンバージョンの意思決定を自由かつ迅速に行えるためです。

 

・事務所や店舗が入居している区画を住居に変更する

・入居者用の駐車場を一部コインパーキングに変更する

・建物を取り壊して更地として売却する

 

コンバージョンが容易であることによって、取り得る投資戦略の選択肢が広がるため、収益性を高めたり周辺の賃貸ニーズに即応させたりすることができるようになるというメリットがあります。

 

区分マンションでは各住戸の室内以外の箇所における意思決定は管理組合での決議が必要であるうえ、コンバージョンをする場合は組合員総数および議決権総数の4分の3以上または5分の4以上の賛成が必要になる(特別決議)ため、合意形成が難航することも想定されます。

 

柔軟かつ機動的な物件運用を考えている投資家は、コンバージョンが容易な一棟物件に投資する方が合理的といえるかもしれません。

 

まとめ

 

日本の不動産投資においては、物件選びの段階で一棟物件と区分マンションのどちらに投資をするかによって狙えるキャッシュポイント、物件運用にかかる時間と手間、用途変更といった投資戦略が大きく異なります。

 

どのキャッシュポイントに最も重きを置くか、物件運用に割ける時間と手間がどの程度あるか、物件運用に対してどの程度の裁量権を持ちたいかといった要素を勘案して、一棟物件と区分マンションのどちらが自分に適しているかを俯瞰的に判断しましょう。

 

なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等についてはお気軽にお問い合わせください。