不動産投資では数千万円以上の規模で投資を行うことが多いため、物件を購入するにあたって金融機関からの融資を受ける場合がほとんどです。
物件価格の満額(フルローン)ないし物件購入時に必要な諸費用分まで(オーバーローン)融資を受けられることもごく稀にありますが、物件価格の一部を自己資金として求められることを想定しておくべきでしょう。
不動産投資を始めるにあたって、どの程度の自己資金でどの程度の規模の物件に投資ができるのでしょうか。
本記事では、自己資金の詳細や求められる目安について言及したうえで、自己資金の金額ごとに想定され得るポートフォリオの一例をシミュレーションしていきます。
index
1-自己資金とは?必要な目安は?
┗1-1頭金
┗1-2諸費用
2-自己資金額ごとのポートフォリオシミュレーション
┗2-1自己資金300万円、頭金割合0%(フルローン)、諸費用2%の場合
┗2-2自己資金300万円、頭金割合10%、諸費用5%の場合
┗2-3自己資金100万円、頭金割合0%(フルローン)、諸費用2%の場合
┗2-4自己資金100万円、頭金割合10%、諸費用5%の場合
┗2-5自己資金50万円、頭金割合0%(フルローン)、諸費用2%の場合
┗2-6自己資金50万円、頭金割合10%、諸費用5%の場合
3-まとめ
自己資金とは、物件を購入する際に必要な全費用(物件価格および諸費用)の合計金額のうち、金融機関からの融資金額を除いた金額のことです。
自己資金に当たる金額は融資で賄うことができないため、投資家自身が拠出しなければいけません。
物件購入にあたって必要な自己資金は、融資を受ける金融機関の方針や投資家自身の年収および金融資産、職業、勤務先といった個人属性、投資物件の担保評価および収益性といった諸般の要素を複合的に考慮して決められます。
以下に述べる頭金および諸費用の割合を加味すると、必要な自己資金の一般的な目安としては物件価格の14〜30%程度と想定しておくのが無難でしょう。
自己資金が一切不要な融資(フルローンおよびオーバーローン)がされるケースもごく稀にありますが、一部の例外的なケースであるといえます。
金融庁の調査によれば、自己資金を一切求めていない金融機関の割合は、銀行では5%、信用金庫・信用組合では13%のみにとどまっており、物件を購入する際には自己資金を求められることが一般的です。
自己資金は以下2つの費用から構成されており、それぞれにおいて求められる金額の割合も異なります。
■頭金
■諸費用
頭金とは、物件価格から融資額を除いた金額で、投資家自身の資金から支払う必要のある金銭を指します。
頭金は目安として物件価格の10〜20%程度を求められるのが一般的ですが、個人属性等の事情によって物件価格の満額融資(フルローン)を受けられる場合には例外的に頭金は不要になります。
諸費用とは、物件購入にあたって必要な各種費用の合計金額です。
具体的な内訳として、仲介手数料、登記費用、司法書士費用、融資関連費用、印紙代、不動産取得税などが挙げられます。
金融機関が物件価格の満額を超えて諸費用分まで融資してくれる例外的な場合(オーバーローン)を除いて、投資家自身が拠出しなければいけない費用です。
諸費用の金額は、仲介業者(物件の売主と買主をマッチングさせる仲立人)を介して物件を購入するか売主から直接購入するかによって異なります。
物件を売主から直接購入する場合には仲介手数料はかかりませんが、仲介業者を介する場合には物件価格の3%+6万円(物件価格が400万円を超える場合)を仲介業者に支払うことになるのが一般的です。
仲介手数料の有無で場合分けをすると、諸費用の目安は以下の通りとなります。
・不動産仲介業者を介して購入する場合は、7〜10%程度
・売主から直接購入する場合は、4〜7%程度
融資を受けるにあたって自己資金が一定程度求められることを踏まえ、自己資金の金額ごとにどのような不動産ポートフォリオを組めるのかをシミュレーションしていきます。
年収および担保となる金融資産の多寡といった個人属性によって、融資を受けられる金額および求められる自己資金の金額は大きく変動し得るため、以下シミュレーションはモデルケースとしてご参照ください。
■自己資金300万円、頭金0%(フルローン)、諸費用4%の場合
■自己資金300万円、頭金15%、諸費用10%の場合
■自己資金100万円、頭金0%(フルローン)、諸費用4%の場合
■自己資金100万円、頭金15%、諸費用10%の場合
■自己資金50万円、頭金0%(フルローン)、諸費用4%の場合
■自己資金50万円、頭金15%、諸費用10%の場合
本条件において受けられる融資金額の上限は、7,500万円前後(300万円/4%)が目安になると考えられます。7,500万円以内の物件で不動産ポートフォリオを組む場合、以下のいずれかのようなポートフォリオになりそうです。
・都心の築浅ワンルームマンション、郊外または地方の一棟アパート等を3〜4件
・都心のタワーマンションを1件
・テナント一棟ビルを1件
タワーマンションや一棟物件で比較的大きな規模のポートフォリオを組めるため、一気にキャッシュフローや資産規模を拡大させることができるでしょう。
本条件において受けられる融資金額の上限は、1,200万円前後(300万円/25%)が目安になると考えられます。1,200万円以内の物件で不動産ポートフォリオを組む場合、以下のようなポートフォリオになりそうです。
・郊外または地方の築古狭小ワンルームマンション、築古戸建等を1〜2件
比較的小さな規模のポートフォリオになるため、キャッシュフローや資産規模の拡大にはならないかもしれませんが、小さく始めたいという投資家には十分な規模かもしれません。
本条件において受けられる融資金額の上限は、2,500万円前後(100万円/4%)が目安になると考えられます。2,500万円以内の物件で不動産ポートフォリオを組む場合、以下のいずれかのようなポートフォリオになりそうです。
・都心の築古ワンルームマンション、地方の築古一棟アパート等を1〜2件
・郊外または地方の築古狭小ワンルームマンション、築古戸建等を2〜3件
大きく不動産投資を始められるというわけではありませんが、十分な規模のポートフォリオが組めるでしょう。
■自己資金100万円、頭金15%、諸費用10%の場合
本条件において受けられる融資金額の上限は、400万円前後(100万円/25%)が目安になると考えられます。400万円以内の物件で不動産ポートフォリオを組む場合、以下のようなポートフォリオになりそうです。
・郊外または地方の築古狭小ワンルームマンション、築古戸建等を1件
資産規模としてはかなり小さいため、利回りが高かったとしてもキャッシュフローはあまりあてにならないでしょう。
本条件において受けられる融資金額の上限は、1,250万円前後(50万円/4%)が目安になると考えられます。1,250万円以内の物件で不動産ポートフォリオを組む場合、以下のようなポートフォリオになりそうです。
・郊外または地方の築古狭小ワンルームマンション、築古戸建等を1〜2件
比較的小さな規模のポートフォリオになるため、キャッシュフローや資産規模の拡大にはならないかもしれませんが、小さく始めたいという投資家には十分な規模かもしれません。
本条件においては、理論上200万円前後(50万円/25%)の融資しか受けられないことになります。
融資可能金額が低いと金融機関の利益の絶対額も低くなることから、融資自体を受けられないというケースも想定されるかもしれません。
本ケースにおいては、自己資金および年収を増やしてから再度不動産投資を検討するのも選択肢の一つです。
不動産投資においては、金融機関からの融資を受けることで自己資金以上の規模の物件を購入することが十分に可能です。
個人属性(年収や金融資産等)によって融資可能金額および求められる自己資金割合等の融資条件が大きく変動することがあり、融資条件の良し悪しによって同じ自己資金であっても購入できる物件の価格は大きく変わってきます。
なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等についてはお気軽にお問い合わせください。