新興国不動産と先進国不動産で使い分けるべき投資方針

新興国不動産と先進国不動産で使い分けるべき投資方針

海外不動産への投資を検討する際、どのエリアに投資するべきか決めかねる投資家も少なくないでしょう。

投資上、海外は新興国と先進国に分けられることが多くあり、新興国(E7諸国やASEAN諸国など)と先進国(G7諸国など)のいずれにどの程度の比率で投資するかは、各投資家の投資方針によって千差万別です。

リスク許容度や海外不動産投資に求めるものに応じて投資対象をオリジナルにカスタマイズすることで盤石なポートフォリオを築きましょう。

本記事では、新興国不動産と先進国不動産で使い分けるべき投資方針について両者の違いを踏まえて解説します。

 

【目次】

1-新興国と先進国の3つの違い
┗1-1成長可能性
┗1-2リスク
┗1-3期待利回り
2-新興国不動産と先進国不動産で使い分けるべき投資方針
┗2-1新興国不動産に投資する場合
┗2-2先進国不動産に投資する場合
3-まとめ

 

新興国と先進国の投資上の3つの違い

新興国と先進国では、不動産投資に限らず投資をするうえで特徴やメリット・デメリットが大きく異なる点が存在します。以下3つの違いを認識して、自身の投資方針に沿うのは新興国資産と先進国資産どちらかを検討しましょう。

■成長可能性
■リスク
■期待利回り

 

■成長可能性

成長可能性とは、GDPの成長や株価および不動産価格等の資産価値の上昇、インフレの進行といった経済的な成長余力のことです。新興国の方が先進国よりも一般的に未成熟である点が多い分、将来的に大きな成長をできる余力を多く有していると予測できます。成長可能性が高いということは、国家単位の経済成長の波に乗って大きな利益を得ることができる可能性があるということです。

新興国の成長可能性を示唆する指標として、以下2つのデータが挙げられます。

・生産年齢人口の総数
・2050年までのGDP予測

生産年齢人口とは15歳から64歳の人口のことで、一般的に経済活動や付加価値創出の主体となり得る層の人口を指します。2019年時点での世界における生産年齢人口の総数は1位が中国、2位がインドで、トップ10に先進国はアメリカしか入っていません。生産年齢人口が多いということは今後の経済活動や付加価値創出に従事できる人口が多いということであるため、新しいアイデアやイノベーションが活発に生まれ、経済成長に寄与する可能性が高まるといえるでしょう。

PwCによる2050年までのGDP予測において、新興国の経済規模は2050年までに先進国の経済規模を50%ないし75%以上も上回るとされています。世界経済は成長を続けるというのが一般的な定説的見解ですが、特に新興国は今後の伸びが大きいと見込まれており、高い成長可能性を秘めているといえます。

 

■リスク

不動産投資を含む投資全般において、新興国はハイリスク、先進国はローリスクであるのが一般的です。新興国の方が先進国よりもハイリスクになりやすいのは、新興国においては以下2つのリスクが先進国よりも顕在化しやすいためでしょう。

・カントリーリスク
・為替リスク

カントリーリスクとは、政治や経済の状況変化によって証券市場や為替市場に混乱が生じた場合に資産価値が変動する可能性のことです。新興国においては政治的な混乱や紛争等によって経済活動がままならない状況の国が先進国よりも多いのが実情であり、国債や株式、不動産の価値が安定しない傾向も先進国より強くあります。新興国への投資は、国家の未成熟さゆえの成長可能性が期待できる反面、リスクテイキングな投資になる可能性が高いことを認識しましょう。

為替リスクとは、為替相場の変動によるリスクを指します。新興国においては、発行元である国家の信用低下により通貨価値が下落するリスクが先進国よりも高いのが一般的です。世界の基軸通貨がアメリカドルであるのは、アメリカという経済的に信用の高い国家が発行する通貨であるというのが大きな理由の一つです。通貨価値が下落すると、投資の手仕舞いをして自国通貨に両替した際に資産価値が大きく目減りしているという結果になり得ます。トルコリラのように、20年間で価値が約93%も下落した新興国通貨もあるため、新興国に投資する際には要注意です。

 

■期待利回り

新興国と先進国で不動産の利回りを比較すると、新興国の方が高い傾向があります。バンコク(タイ)やマニラ(フィリピン)、ドバイでは5%以上の数値となっていますが、東京(日本)やニューヨーク(アメリカ)、ロンドン(イギリス)では2%台にとどまっています。

先進国の不動産には、安全性および信頼性の高さから国内外の投資家からマネーが流入するため、価格が高止まりする傾向があるというのが低利回りである要因の一つでしょう。投資においてリスクとリターンは一般的に比例するため、リスクの大小がリターンに反映されているといえます。

 

新興国不動産と先進国不動産で使い分けるべき投資方針

不動産を含め、新興国資産はハイリスク・ハイリターン、先進国資産はローリスク・ローリターンである傾向があります。両者の特徴やメリットおよびデメリットを踏まえて、投資方針を以下のように使い分けることでリスク分散の効いた盤石なポートフォリオを組みやすくなるでしょう。

■新興国不動産に投資する場合
■先進国不動産に投資する場合

 

■新興国不動産に投資する場合

新興国不動産に投資する場合は、リスク資産としての高いパフォーマンスを求めるという投資方針を持っておくのが得策でしょう。新興国不動産は値上がりも高い利回りも狙えるため、高いパフォーマンスを出すための資産としてポートフォリオに組み入れるのも選択肢の一つです。

高いパフォーマンスが期待できる一方で、資産価値の不安定さというハイリスクも併存するため、あくまでポートフォリオにスパイスとして一部加える程度にとどめておくべきともいえそうです。

リスクをとってでも少ない資金を比較的短期間で大きく増やしたい場合や先進国不動産等の安定資産が一定程度ある中で資産規模拡大のブースターとする場合に適しているのが新興国不動産でしょう。

 

■先進国不動産に投資する場合

先進国不動産に投資する場合は、安定資産としてリスクの軽減という投資方針を持っておくのが得策でしょう。先進国不動産は価格の急騰や高利回りといったハイリターンが期待しにくい分、安定性というリスク軽減の効果が見込まれるため、ポートフォリオの基盤として比率を高めに組み入れるのも選択肢の一つです。

長期保有を前提として投資をするのであれば、ポートフォリオに盤石な基盤を持たせることが重要であるため、先進国不動産は安定資産として多いに機能するかもしれません。

既にまとまった資金があり、リスクを抑えて長期的に安定した資産運用をしたい場合や少しずつでもいいので安全かつ着実に資産規模を拡大したい場合に適しているのが先進国不動産でしょう。

 

まとめ

海外不動産という同じ括りの中でも、新興国と先進国では特徴やメリットおよびデメリットが大きく異なることもあるため、ポートフォリオにおける位置付けや求めるものも大きく異なるでしょう。投資をする際は、投資方針およびゴールを明確に描いたうえでポートフォリオに組み入れる資産、リスク資産と安定資産の比率等を決めていくのが得策です。

なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等についてはお気軽にお問い合わせください。