海外不動産への投資を検討する中で、資金調達の点で以下のような疑問を持つことはないでしょうか?
・現金一括でなければ海外不動産は買えないのでは?
・海外不動産投資のローンを組める金融機関はあるの?
・どんな資産を担保にできるの?
従来は海外不動産への投資は現金一括でしか行えないと思われがちでしたが、近年では海外不動産への投資に対して融資をする金融機関が増えてきています。
様々な資産を担保にして融資を受けることで、手元の現金を切り崩さずに海外不動産に投資をすることが可能です。
本記事は「海外不動産投資でローンを組む方法5選」の記事群の2本目です。全5本の記事をお読みいただくことで、海外不動産に投資する際の資金調達の方法についての網羅的な理解を習得していただくことができるでしょう。
現金一括での購入という方法以外にも海外不動産に投資をする方法があるということをご理解いただき、海外不動産への投資に役立てていただければ幸いです。
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日本の証券会社では、保有している株や債券(以下、総称して「有価証券」といいます)を担保にして融資を受けることができる可能性があります。このようなローンを「証券担保ローン」といいます。
証券担保ローンにおける借入可能額は、各有価証券の時価に「掛け目」というディスカウント値を乗じて算出されるのが一般的です。
掛け目は当該資産の流動性、時価総額、投資対象、格付け等を勘案して決められており、安全資産ほどそのパーセンテージが大きくなります。有価証券には価格変動があるため、担保とするにあたっては価格下落を想定し、価値が割り引かれて評価されるためです。
例えば、現金は100%、国債やMMF(Money Market Fund)は95%、国際分散ファンドは80%、株式は30%〜60%というような割合で設定されます。同じ1億円の資産であっても、現金の場合は1億円の担保として評価されるのに対して、有価証券の場合は3,000万円〜9,500万円と評価される場合があるということです。
保有している有価証券を担保に証券会社から資金調達ができるため、手元の有価証券を売却・現金化して外貨を買い、現金一括で購入するという方法をとらずとも海外不動産に投資ができます。
長期保有用の有価証券をまとまった金額で保有しており、それらを売却せずに有効活用したいという方は一度検討してみる価値のある資金調達方法の一つといえるでしょう。
有価証券を担保にしてローンを組むという方法には、どのようなメリットおよび注意点があるのでしょうか?
それぞれについての重要なポイントを解説します。
メリットは以下の3つです。
・保有している有価証券を売却せずに資金調達ができる
・圧倒的な低金利
・返済方法が柔軟
不動産投資では運用期間が中長期的なタームになることが多いため、有価証券の保有を続けながら、融資金利を抑えつつ融通の利いた返済方法をとることができるという点で、有価証券を担保にしてローンを組むという方法は不動産投資に適した資金調達方法といえるでしょう。
・保有している有価証券を売却せずに資金調達ができる
証券担保ローンにおいては、保有している有価証券を担保として提供するのみでよいため、売却をする必要がありません。
有価証券の保有を続けられるということは、利息や配当金、株主優待等を受け続けられるということです。
有価証券の長期保有によるメリットを享受し続けながら資金調達ができるという点は大きなメリットといえます。
・圧倒的な低金利
資産規模や融資金額によっては圧倒的な低金利でローンを組むことができます。証券担保ローンを扱う証券会社は多くありますが、商品によっては金利が高かったり担保掛け目が低かったりと投資家に不利な条件のものもあるため、証券会社選びが重要です。
証券会社によっては0パーセント台の超低金利でローンを組めることもあり得るため、コストを抑えてキャッシュフローを最大限に高めることもできるでしょう。
融資金利の差が毎月のキャッシュフローにどの程度影響するか、1億円の融資を受けて年間家賃収入が1,000万円の物件に投資した場合を想定してシミュレーションしてみます。
金利 | 0.5% | 1% | 2% | 3% |
月間キャッシュフロー | 27万円 | 25万円 | 20万円 | 15万円 |
※融資期間25年、空室率10%、諸経費率15%と仮定
本事例の場合、上掲の表のように金利が1%上がると月間キャッシュフローが5万円(年間60万円)も減少するため、低金利で融資を受けることができるメリットは非常に大きいといえます。
・返済方法が柔軟
証券担保ローンの返済においては、以下2つの点で柔軟なローンを組むことができる可能性があります。
・元本の返済は「あるとき払い」でよい
・ローン返済をロールオーバーできる
あるとき払いとは、ローンの返済等について期限を決めず、資金的に余裕のある時に支払うという形態をいいます。
証券担保ローンの返済においては、借入期間中に返済義務があるのは金利部分のみであり、元本部分は資金的余裕のある時に返済すればよいという柔軟な返済方法をとることができる場合があるということです。
ロールオーバーとは、「乗り換え」を意味し、取引に期限のあるポジションを保有している場合に、取引最終日までにいったん決済をして次の期限(次限月)以降のポジションに乗り換えることを指します。
ローン返済に置き換えると、ローンの返済期限(20年、25年等)を迎えて融資が終了した後に返済を繰り越すことができる場合があるということです。
注意点は以下の4つです。
・担保にした有価証券が拘束される
・担保割れのリスク
・融資を受ける以上、金利がかかる
・為替リスクがある
・担保にした有価証券が拘束される
担保となった有価証券は自分の資産であり続けるものの、ローンを完済するまでは売却することができなくなります。保有銘柄を入れ替えたり、現金化したりする際に制約を受ける可能性があるという点は認識しておきましょう。
不動産投資は年単位の中長期投資になることが想定されるため、中長期的な資金計画を立てたうえでどの程度の有価証券を担保にすることができるかという点を熟慮する必要があります。
・担保割れのリスク
有価証券の時価およびリスク要因は常に変動し得るものであるため、価格の急落や突発的なリスク要因の出現等によって担保価値が大きく変動するリスクがあります。
個別銘柄の株式や債券を担保としている場合、発行体の不祥事や経営悪化といったネガティブニューズ、投資対象としての格付け下落等のリスク要因が生じると担保価値が大きく下がることもあり得るでしょう。
担保価値が下落した結果、追加で担保を求められたりローンの早期返済を求められたりすることがあるため、リスク要因として認識しておく必要があります。
一般的に有価証券は不動産よりも価格が急激かつ大きく変動するリスクがあるため、担保割れのリスクが顕在化する可能性は有価証券の方が高いでしょう。
不動産を担保とした場合の担保割れリスクについては、「海外不動産投資でローンを組む方法5選!③国内不動産を担保にする」「海外不動産投資でローンを組む方法5選!④海外不動産を担保にする(国内金融機関編)」「海外不動産投資でローンを組む方法5選!⑤海外不動産を担保にする(海外金融機関編)」をご参照ください。
・融資を受ける以上、金利がかかる
融資を受ける場合、大なり小なり金利の支払いが発生します。
投資する不動産の利回りが高くても、金利がかかれば実質的な投資パフォーマンスはその分低下するため注意が必要です。
投資する不動産の利回りと支払う金利の利率のバランスを考慮して、その投資における収益性を総合的に判断しましょう。
一方、現金一括で購入する場合は金利がかからないため、その分のコストとリスクを抑えることができます。現金一括で購入する方法については、「海外不動産投資でローンを組む方法5選!①現金一括で購入または現金を担保に融資を受ける」をご参照ください。
・為替リスクがある
為替リスクとは、為替レートの変動によって外貨の価値が変動するリスクのことです。
日本の金融機関からの融資および返済は日本円で行われます。一方で物件購入時の支払いおよび家賃収入の授受は外貨で行われるため、物件購入時および返済時に外貨と日本円を両替しなければいけません。
両替の際に円高が進行していると外貨の対円価値が目減りしてしまうため、調達した資金で不動産を購入できなくなったり家賃収入の中から返済ができなくなったりするリスクがあるということです。
為替リスクをヘッジするために、海外不動産からの家賃収入以外の資金(日本円で得られる国内不動産からの家賃収入や給与収入等)で返済を行うというのも選択肢の一つです。
海外の金融機関から融資を受ける場合は融資も返済も外貨で行うことになるため、為替リスクをヘッジすることができます。海外の金融機関から融資を受ける方法については、「海外不動産投資でローンを組む方法5選!⑤海外不動産を担保にする(海外金融機関編)」をご参照ください。
有価証券を担保にしてローンを組むという方法に向いている方・向いていない方という点について、投資の目的やスタイルの観点から解説します。
■向いている方
■向いていない方
有価証券を担保にしてローンを組むという方法に向いているのは以下のような方です。
・有価証券を長期投資目的で豊富に保有している方
・ポートフォリオにおいて安全資産(先進国の国債や大型優良株等)の割合が高い方
価格変動のある資産を担保にしてローンを組むという観点から、売却をする予定が長期的になく、担保として高く評価してもらえる安全資産を多く保有している方に適した資金調達方法といえるでしょう。
有価証券を担保にしてローンを組むという方法に向いていないのは、以下のような方です。
・短期的な投資目的で有価証券を保有している方
・ポートフォリオにおいてリスク資産(新興国の国債や新興・小型株等)の割合が高い方
担保とした有価証券はローン完済まで拘束されるという点、リスク資産は担保価値の変動可能性が高いという点から、上記のような方には適さない資金調達方法といえるでしょう。
海外不動産は現金一括で購入するという方法だけではなく、ローンを活用するという手段をとることもできます。
本記事で紹介した有価証券を担保としてローンを組むという方法は、長期投資目的の安全資産が豊富にあり中長期的な資産運用を考えている方に適した資金調達方法です。
ご自身の資産状況や投資の目的等を勘案して、どのような方法で資金調達をするが最も合理的かをプロの意見も聞きながら客観的に判断するのが、海外不動産投資を成功に導く近道になるかもしれません。
なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等については、お気軽にお問い合わせください。