海外不動産への投資を検討する中で、資金調達の点で以下のような疑問を持つことはないでしょうか?
・現金一括でなければ海外不動産は買えないのでは?
・海外不動産投資のローンを組める金融機関はあるの?
・どんな資産を担保にできるの?
従来は海外不動産への投資は現金一括でしか行えないと思われがちでしたが、近年では海外不動産への投資に対して融資をする金融機関が増えてきています。
様々な資産を担保にして融資を受けることで、手元の現金を切り崩さずに海外不動産に投資をすることが可能です。
本記事は「海外不動産投資でローンを組む方法5選」の記事群の1本目です。全5本の記事をお読みいただくことで、海外不動産に投資する際の資金調達の方法についての網羅的な理解を習得していただくことができるでしょう。
現金一括での購入という方法以外にも海外不動産に投資をする方法があるということをご理解いただき、海外不動産への投資に役立てていただければ幸いです。
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海外不動産に投資をする場合も、国内不動産に投資する場合と同様に現金一括で不動産を購入するという方法がとれます。
日本国内の金融機関が海外不動産投資への融資を行いはじめるまでは現金一括による購入が前提となっていました。
しかし、近年では現金一括で購入するという方法に加えて、国内の金融機関(銀行や信用金庫等)に資産を預けている場合に定期預金等の現預金を担保にして融資を受けることができる可能性があります。
例えば、3億円の現金を預けている場合に、そのうちの1億円を担保にして1億円分の資金を調達できるということです。
国内の金融機関から調達した資金で海外不動産を購入できるため、手元の現金を使って外貨を買い、現金一括で購入するという方法をとらずとも海外不動産に投資ができます。
資産の大部分を現金で保有しており、現金を使うことにリスクを感じるという方は一度検討してみる価値のある資金調達方法の一つといえるでしょう。
現金一括または現金を担保にしてローンを組むという方法には、どのようなメリットおよび注意点があるのでしょうか?
それぞれについての重要なポイントを解説します。
メリットは以下の4つです。
・即時決済ができる(現金一括の場合)
・圧倒的な低金利(融資を受ける場合)
・担保としての安全性が高い(融資を受ける場合)
・手元の現金を使わずに不動産投資ができる(融資を受ける場合)
不動産投資では運用期間が中長期的なタームになることが多いため、融資金利を抑えて安全かつ着実に資産運用ができるという点で、現金を担保にしてローンを組むという方法は不動産投資に適した資金調達方法といえるでしょう。
・即時決済ができる(現金一括の場合)
現金一括で購入する場合、融資上の手続(融資審査や実行手続等)を行う必要がないため物件購入に要する時間を大幅に短縮することができます。
スピーディかつ円滑に取引を進めることができるため、買主側には物件が早く自分の所有物となるというメリット、売主側には現金が早く手に入るというメリットがあります。
・圧倒的な低金利(融資を受ける場合)
担保となる資産が現金という安全資産であり、融資金額が大きいほど金利優遇を受けることができる可能性が高まるため、圧倒的な低金利でローンを組むことができます。
0パーセント台の超低金利でローンを組めることもあり得るため、コストを抑えてキャッシュフローを最大限に高めることもできるでしょう。
融資金利の差が毎月のキャッシュフローにどの程度影響するか、1億円の融資を受けて年間家賃収入が1,000万円の物件に投資した場合を想定してシミュレーションしてみます。
金利 | 0.5% | 1% | 2% | 3% |
---|---|---|---|---|
月間キャッシュフロー | 27万円 | 25万円 | 20万円 | 15万円 |
※融資期間25年、空室率10%、諸経費率15%と仮定
本事例の場合、上掲の表のように金利が1%上がると月間キャッシュフローが5万円(年間60万円)も減少するため、低金利で融資を受けることができるメリットは非常に大きいといえます。
・担保としての安全性が高い(融資を受ける場合)
一般的に現金は株や債券のように価格が乱高下する可能性が低い安全資産であるため、担保としての安全性が非常に高いといえます。
価格が乱高下する可能性が低いということは、担保割れになって追加担保を求められるリスクが低いということです。株や債券を担保とした場合の担保割れリスクについては、「海外不動産投資でローンを組む方法5選!②株や債券を担保にする」をご参照ください。
現金の場合も国内での急激なインフレや対外貨での通貨安が発生すると相対的に価値が下落することもあり得ますが、日本円の価値が急激に暴落するリスクを過度に恐れる必要はないでしょう。
日本のインフレ率は2000年以降低調な推移を続けている(INTERNATIONAL MONETARY FUNDの発表による)うえ、日本円はアメリカドル・ユーロに次いで世界で3番目に多く取引されている信用性の高い通貨(国際決済銀行の発表による)であるためです。
新興株式のように価値が不安定である資産を担保とする場合、その資産の価値が暴落すると担保不足に陥り、追加の担保提供や融資残高の一部返済等を求められる可能性も否定できません。
日本円の現金という安定資産を担保としているという点で、ローンを組んでいるというリスクを十分にカバーできているといえるでしょう。
・手元の現金を使わずに不動産投資ができる(融資を受ける場合)
融資を受ける場合、担保として手元現金を提供することにはなりますが、保有する現金の金額が減るわけではありません。
担保となった現金はローンを完済すれば返ってくるため、手元の現金を切り崩すことなく不動産投資ができるというメリットがあるといえます。
注意点は以下の4つです。
・手元の現金が減る(現金一括の場合)
・担保にした現金が投資期間中は拘束される(融資を受ける場合)
・融資を受ける以上、金利がかかる(融資を受ける場合)
・為替リスクがある
・手元の現金が減る(現金一括の場合)
現金一括で購入する場合、投資金額分の手元現金を切り崩す必要があります。
投資物件によっては数千万円以上の規模の現金が手元からなくなることになるため、ご自身のライフプランや可処分所得の金額に応じて投資規模を慎重に吟味する必要があるでしょう。
・担保にした現金が投資期間中は拘束される(融資を受ける場合)
融資を受ける場合、担保となった現金は自分の資産であり続けるものの、ローンを完済するまでは自由に使うことができなくなります。
不動産投資は年単位の中長期投資になることが想定されるため、中長期的な資金計画を立てたうえでどの程度の現金を担保にすることができるかという点を熟慮する必要があるでしょう。
・融資を受ける以上、金利がかかる(融資を受ける場合)
融資を受ける場合、大なり小なり金利の支払いが発生します。
投資する不動産の利回りが高くても、金利がかかれば実質的な投資パフォーマンスはその分低下するため注意が必要です。
投資する不動産の利回りと支払う金利の利率のバランスを考慮して、その投資における収益性を総合的に判断しましょう。
・為替リスクがある
為替リスクとは、為替レートの変動によって外貨の価値が変動するリスクのことです。
日本の金融機関からの融資および返済は日本円で行われます。一方で物件購入時の支払いおよび家賃収入の授受は外貨で行われるため、物件購入時および返済時に外貨と日本円を両替しなければいけません。
両替の際に円高が進行していると外貨の対円価値が目減りしてしまうため、調達した資金で不動産を購入できなくなったり家賃収入の中から返済ができなくなったりするリスクがあるということです。
為替リスクをヘッジするために、海外不動産からの家賃収入以外の資金(日本円で得られる国内不動産からの家賃収入や給与収入等)で返済を行うというのも選択肢の一つです。
現金一括または現金を担保にしてローンを組むという方法に向いている方・向いていない方という点について、投資の目的やスタイルの観点から解説します。
■向いている方
■向いていない方
現金一括または現金を担保にしてローンを組むという方法に向いているのは以下のような方です。
・余剰の現金が豊富にある方
・安全性を重視した投資をしたい方
・小口の不動産投資をしたい方
資産を短期間で大きく増やすというよりも、小規模であってもリスクを抑えて中長期で安全に運用したいと考えている方に適した投資方法といえるでしょう。
・余剰の現金が豊富にある方
担保に提供した現金はローン完済まで拘束されるという理由から、投資に回せる余剰の現金が豊富にある方に適しています。
万が一の際の生活防衛資金や海外不動産以外の資産に分散投資するための資金を確保したうえで、余剰の現金を担保にするようにしましょう。
ご自身のライフプランや投資ビジョンをよく加味したうえで、いくらまでなら担保にできそうかという点を客観的に把握することが重要です。
・安全性を重視した投資をしたい方
日本円の現金は世界でも有数の安全資産であるため、中長期にわたって安心して担保に提供することができるでしょう。
担保の安全性ゆえに極めて低い金利でローンを組むことができるため、支払利息という固定コストを抑えることができ、投資の収支という点においても安全性が高いといえます。
・小口の不動産投資をしたい方
海外不動産への投資を初めて行う方は、現金一括で購入できる範囲の小口な投資からスタートするというのも選択肢の一つです。
現金一括で購入すればローン返済や金利の支払いがないため、リスクを軽減することができます。
「超富裕層」(純金融資産保有額が5億円以上)などの方は、現金一括で購入できる小口な物件から海外不動産投資にチャレンジすることも検討してみましょう。
現金一括または現金を担保にしてローンを組むという方法に向いていないのは以下のような方です。
・短期投資などアクティブな投資に現金を回したいと考えている方
・レバレッジを効かせて大規模な不動産投資をしたい方
・短期投資などアクティブな投資に現金を回したいと考えている方
現金を担保に入れたり物件購入に充てたりすると、アクティブな投資に機動的に回すことができる手元現金が減少してしまいます。
取引の回数が多く、短期間で高いリターンを狙っている方には適さない投資方法といえるでしょう。
・レバレッジを効かせて大規模な不動産投資をしたい方
現金一括での物件購入を考える場合、可処分現金の範囲内の投資しかできなくなるため、融資を受ける場合よりも資産規模の拡大スピードが遅くなります。
レバレッジを効かせて大規模な不動産投資を行い、加速度的に資産規模の拡大をしたいと考えている方にとって現金一括での物件購入は適さないでしょう。
海外不動産は現金一括で購入するという方法だけではなく、ローンを活用するという手段をとることもできます。
本記事で紹介した現金一括または現金を担保としてローンを組むという方法は、余剰資金が豊富にあり中長期的な資産運用を考えている方に適した資金調達方法です。
日本円の現金という安全資産を担保にできるという強みを活かし、低金利でローンを組んで安全性が高い状態で海外不動産に投資をすることができるというメリットがあります。
一方で、中長期的な投資を前提とすることが多い不動産投資であるため、担保として提供した現金はローン完済までの間は自由に使えなくなるという点にも十分に留意しておく必要があるでしょう。
ご自身の資産状況や投資の目的等を勘案して、どのような方法で資金調達をするが最も合理的かをプロの意見も聞きながら客観的に判断するのが、海外不動産投資を成功に導く近道になるかもしれません。
なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等については、お気軽にお問い合わせください。