コロナ禍で東京都では転出超過が進行しており、東京都人口統計課の発表によれば2021年1月から8月の間で東京23区の人口は0.16%減少(9,732,290人→9,716,517人)したとのことです。
コロナ後を見据えた都心部での不動産投資を考える人にとって、都心部の賃貸市場の動向は最も気掛かりな項目の一つでしょう。
本記事では、コロナ禍の都心部における家賃相場および空室率という2つの観点から都心部の賃貸市場を分析します。
index
1-家賃相場は微増するも、2021年以降は上げ渋る
┗1-1 2020年までは上昇トレンドが継続
┗1-2 2021年に入り上昇が鈍化し上げ渋り
2-空室率は低水準で安定推移
┗2-1首都圏における空室率
┗2-2東京23区における空室率(アパート)
┗2-3東京23区における空室率(マンション)
3-都心部の不動産の安定性は変わらないが物件選びは慎重に
4-まとめ
株式会社東京カンテイの発表(2021年9月16日)によれば、2015年から2021年における東京23区の分譲マンション家賃の平米単価(1㎡あたりの単価)は以下のグラフのように推移しています。
※株式会社東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別/分譲マンション賃料月別推移」より
上掲グラフから、東京23区の家賃相場の状況を以下2つのトピックに分けて分析していきます。
■2020年までは上昇トレンドが継続
■2021年に入り上昇が鈍化し上げ渋り
2015年から2020年まではグラフ内青矢印のように右肩上がりの上昇が続いており、同期間の上昇率は21%を上回っています(3,180円/㎡→3,849円/㎡)。
同期間における他の首都圏エリアの家賃上昇率は以下の表の通りであり、東京23区が首都圏で最も高い上昇をしていることが分かります。
横浜市 | さいたま市 | 千葉市 |
---|---|---|
17.8% | 8.2% | 5.7% |
※株式会社東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別/分譲マンション賃料月別推移」より
東京23区の家賃相場は2020年に入ってからも3,700円台から3,800円台まで上昇しているため、コロナ禍が本格化した中でも2020年中は上昇トレンドを維持していたといえます。
2021年に入ると上昇トレンドが横ばいに変わり、グラフ内赤矢印のように上げ渋る展開となりました。2021年だけで測ると、家賃相場は0.4%の下落となっています(3,853円/㎡→3,829円/㎡)。
本データを東京カンテイは「築11年〜20年で緩やかな下落傾向を示している」と分析しており、築浅とまではいえないものの安定的に賃貸需要があった築年数の物件において、家賃の上昇トレンドに鈍化傾向が強く見られていると考えられます。
東京23区における人口の微減に伴って賃貸需要が例年より微減し、築11年〜20年の物件で強気の家賃設定ができなくなったという点が、2021年における家賃上昇の鈍化の一因といえそうです。
2021年における他の首都圏エリアの家賃上昇率は以下の表の通りであり、東京23区以外では上昇トレンドが継続していることが分かります。
横浜市 | さいたま市 | 千葉市 |
---|---|---|
3.6% | 7.4% | 15.1% |
※株式会社東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別/分譲マンション賃料月別推移」より
東京23区の家賃相場は2021年のみで測ると減少していますが、2020年までは継続して強い上昇トレンドであったうえに減少率が0.4%と軽微であるため、都心部での不動産投資を控えるべきといえるほどの状況ではないと評価できるでしょう。
一方で、2022年以降も家賃下落に歯止めがかからないというバッドシナリオを完全に否定することもできないため、今後も最新情報を随時チェックすることが重要です。
都心不動産の空室率について、以下3つの視点から分析します。
■首都圏における空室率
■東京23区における空室率(アパート)
■東京23区における空室率(マンション)
首都圏各エリアの空室率を俯瞰したうえで、東京23区の空室率をアパート(木造、軽量鉄骨造)とマンション(鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造)に分けてそれぞれ分析します。
株式会社タスが発表したデータ(2021年8月31日)によれば、2019年7月以降の首都圏各エリアにおける空室率は以下のグラフのように推移しています。
※株式会社タス「賃貸住宅市場レポート 首都圏版 関西圏・中京圏・福岡県版 2021年8月」より
23区における空室率は、コロナ禍においてもコロナ前と同じ水準(13ポイント前後)を推移しており、首都圏での最低水準を維持していることが分かります。
株式会社タスが発表したデータ(2021年8月31日)によれば、2016年6月以降の東京23区におけるアパートの空室率は以下のグラフのように推移しています。
※株式会社タス「賃貸住宅市場レポート 首都圏版 関西圏・中京圏・福岡県版 2021年8月」より
空室率はコロナ禍で1ポイント程度微増(11→12)し、2016年以降の最高値を記録しており、2021年6月時点では首都圏の中で最も高いポイントとなっています。
東京23区の空室率は過去5年間で最も高い水準となっていますが、以下2つの理由から長期的に空室率が上昇し続けるリスクを過度に危惧する必要はないでしょう。
新型コロナウイルスの新規感染者数が落ち着き、都心部の人通りがコロナ前に戻るに連れて、東京23区の空室率もコロナ前水準に戻るというシナリオも大いに想定されます。
家賃相場についても空室率についても、コロナ禍における東京23区の賃貸市場には懸念点が散見されますが、いずれも一時的な伸びの停滞と考えられるでしょう。
したがって、都心部の不動産は引き続き安定的な資産であり続けると考えられますが、家賃相場が下落トレンドに変わり、空室率が上昇を続けるというリスクも投資家として想定しておかなければなりません。
コロナ後を見据えた不動産投資では、リスク回避のための適切な情報収集と物件選びの慎重さがこれまでよりも一層求められるでしょう。
都心部での不動産投資を検討する際は、都心部の不動産投資を熟知し、賃貸市場の最新情報を豊富に有している不動産業者に相談するのが得策です。
コロナ禍において東京23区では人口が減少したこともあり、家賃相場の上昇が鈍化し、マンション物件の空室率が高水準に上昇しています。
一方で、家賃上昇の鈍化も空室率の上昇も東京23区の賃貸市場が根本的に覆るほどのレベルとまではいえないため、都心部の不動産投資に消極的になる必要はないでしょう。
都心部に強い不動産業者をパートナーとすることで、コロナ禍においても安定性と収益性の高い不動産投資を行うチャンスは十分にあるといえます。
なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等については、お気軽にお問い合わせください。
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