2020年から世界中で続くコロナ禍において、日本の不動産マーケットに対して以下のような懸念する投資家は少なくないでしょう。
・コロナショックで日本の不動産価格は大暴落するのではないか?
・コロナ禍を経て日本の不動産マーケットはどのように変化するのか?
・過去のショック時に日本の不動産マーケットはどう推移したか?
コロナ禍でも有利な不動産投資を行うためには、不動産マーケットのコロナ禍における実情と今後の見通しについての客観的なデータを把握しておくことが重要です。
本記事では、日本の不動産マーケットに関するコロナ禍のデータおよび過去の大きなショック時(リーマンショック、東日本大震災)におけるデータを用いて、コロナ後の日本不動産に関する見通しを2つ解説します。
index
1-コロナショックで日本不動産は大暴落?データから導く2つの見通し
┗1-1大暴落する可能性は低い
┗1-2自宅で生活を完結させるニーズが高まる
2-過去のショック時に日本の不動産マーケットはどう推移した?
┗2-1リーマンショック
┗2-2東日本大震災
3-まとめ
コロナショックによりもたらされる日本の不動産マーケットへの影響に関する見通しは以下の2つです。
■大暴落する可能性は低い
■自宅で生活を完結させるニーズが高まる
価格が大暴落する可能性は低いと結論づけることはできますが、一般消費者(買い手・借り手)のニーズが変化・多様化することが想定されます。
コロナ後の日本で不動産投資を行うにあたっては、マーケットで起こるニーズの変化をすばやくキャッチし、柔軟に対応していくことがより一層求められるでしょう。
コロナ禍で不動産投資家が現金化を急ぐために所有する不動産を投げ売りし、マーケットに売り物件が大量に出回った結果、不動産価格が大暴落するというバッドシナリオを完全に否定することはできません。
しかし、以下2つの理由から上記のようなバッドシナリオが現実化する可能性は低いといえるでしょう。
・コロナ禍でも価格および取引件数の推移が堅調である
・日本の不動産はショックに強い
株式会社東京カンテイが2021年8月24日に発表したデータによれば、2021年5〜7月に集計した全国主要都市の中古マンション価格(70㎡あたり)は以下のグラフのように推移しています。
※株式会社東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70㎡価格月別推移」より
全国的に2015年から右肩上がりの上昇を続けており、コロナ禍が本格化した2020年以降も上昇トレンドは崩れていません。
レインズ(国土交通省が認定した公益法人によって運営される不動産情報サイト)が発表する「月例マーケットウォッチ」のデータによれば、2019年から2021年における東京23区の中古マンション取引件数の月間平均値は以下の表の通りです。
2019年 | 2020年 | 2021年※ | |
---|---|---|---|
取引件数(件/月) | 1,354 | 1,257 | 1,386 |
※2021年は1〜8月の平均値
コロナ禍に初めて直面した2020年はマーケットの動きが停滞し、取引件数は前年よりも微減しましたが、2021年にはコロナ前水準を上回るレベルにまで回復しています。
コロナ禍における不動産価格および取引件数の推移から、コロナショックによる不動産マーケットへのマイナス影響は一時的かつ軽微なものであると評価できそうです。
過去に起こったコロナショック級のネガティブイベント時に日本の不動産マーケットにどの程度のマイナス影響があったのでしょうか?
結論を述べると、リーマンショックおよび東日本大震災という大規模なショック時にも日本の不動産マーケットは大きなダメージを受けず、回復にも時間はかかりませんでした。
大規模なショック時でも崩れなかった日本の不動産はショック相場に強く、長期的な安定資産といえるということです。
過去のショック時における日本の不動産マーケットについては、セクション②「過去のショック時に日本の不動産マーケットはどう推移した?」で詳説します。
2020年10月に発表された金融庁の「コロナ以後の経済社会構造の変化」において、コロナ禍で人々の価値観および行動様式に以下3つの変化が起こったと言及されています。
・インターネットショッピングやSNSの利用といった非対面・オンライン活動の増加
・医療における受診控えやオンライン診療の増加
・自宅以外における運動や外食といった直接接触・対面の活動の減少
実際にインターネットショッピングの利用は、2021年9月7日に総務省統計局が発表したデータによればコロナ禍で利用額および利用世帯の割合ともに増加しています(以下グラフ参照)。
※家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について (二人以上の世帯) -2021年(令和3年)7月分結果-より
コロナ後も日用品を中心にインターネットショッピングでの調達が定着する可能性は大いにあるでしょう。
働き方の意識にも変化が起こっており、金融庁の「コロナ以後の経済社会構造の変化」によれば、コロナ禍で広まったテレワークをコロナ後も続けたいと回答する従業員は52.8%に上っています。
以上のデータから、日常生活も仕事も自宅で完結させるというライフスタイルへのニーズが高まることも十分にあり得ます。
自宅で生活を完結させるニーズの高まりにより、不動産投資においては以下3つのような賃貸需要の変化が起こり得るでしょう。
・宅配ボックスが必須設備になる
・仕事場を作るために部屋数の多い物件が求められる
・共用部分にワーキングスペースがある物件が求められる
コロナ後を見据えて物件選びをする際は、コロナ禍で定着した新しいニーズに適応しているか否かを判断基準に加えるのが適切かもしれません。
コロナショックによる日本不動産への影響を測るために、以下2つの過去に起きた大規模なショックと比較をして検証します。
■リーマンショック
■東日本大震災
レインズの発表によれば、リーマンショックが発生した2008年から起算して3年間の東京23区における中古マンションの成約単価(1㎡あたりの価格)および年間取引件数は以下の表の通りです。
年 | 成約単価(万円/㎡) | 前年比(%) | 取引件数(件)前年比(%) | |
---|---|---|---|---|
2008 | 58.11 | 0.3 | 10,213 | 4.2 |
2009 | 54.48 | -6.2 | 11,174 | 9.4 |
2010 | 57.33 | 5.2 | 10,514 | -5.9 |
リーマンショックが発生した翌年(2009年)は成約単価が6.2%も下落しており、同減少率は2001年以降で最大の下落率になっています。
しかし、2010年にはリーマンショック前水準に近い57万円/㎡台に回復していることから、東京23区におけるリーマンショック時の不動産価格の下落は1年間のみにとどまったといえそうです。
一方で取引件数は2008年から2009年にかけて9.4%増加しており、同増加率は2001年以降で5番目に高い数値になっています。
2009年に取引件数が増加した理由の一つとして、リーマンショックによって資金繰りが苦しくなった企業や個人が、現金を確保するために所有不動産を売り急いだことが考えられるでしょう。
成約単価・取引件数のいずれについても、2009年のデータに照らすとリーマンショックの影響を受けてはいますが、異常値といえるほどの急騰落ではないうえ、2010年には落ち着きを取り戻していることから、不動産取引の相場を揺るがすレベルのマイナス影響はなかったと評価できます。
レインズの発表によれば、東日本大震災が発生した2011年から起算して3年間の東京23区における中古マンションの成約単価(1㎡あたりの価格)および年間取引件数は以下の表の通りです。
年 | 成約単価(万円/㎡) | 前年比(%) | 取引件数(件) | 前年比(%) |
---|---|---|---|---|
2011 | 55.72 | -2.8 | 10,241 | -2.6 |
2012 | 54.20 | -2.7 | 11,592 | 13.2 |
2013 | 57.66 | 6.4 | 13,982 | 20.6 |
東日本大震災が発生した2011年およびその翌年(2012年)は成約単価いずれも3%近く下落しており、2001年以降で2年続けて成約単価が下落したのはこれらの年のみです。
しかし、2013年には成約単価が上向き、震災前の水準(2010年の57.33万円/㎡)を上回っていることから、東京23区における東日本大震災時の不動産価格の下落は軽微かつ一時的であったと評価できます。
一方で取引件数は2010年から2011年にかけて2.6%減少しており、同減少率は2001年以降で4番目に高い数値になっています。
2011年の取引件数が対前年比で減少した理由の一つとして、余震による建物の損壊や経済活動の麻痺等を警戒した買い控えが起こったことが考えられるでしょう。
成約単価および取引件数のいずれについても、2011・2012年のデータに照らすと東日本大震災の影響を受けているとはいえますが、リーマンショック時と比べると小規模であるうえ、2013年には落ち着きを取り戻していることから、不動産マーケットを揺るがすレベルのマイナス影響はなかったと評価できます。
コロナ禍においても日本不動産は安定的に価格上昇を続けており、活発に取引が行われていることから、これから価格が大暴落する可能性は低いといえるでしょう。
特に東京23区の物件はリーマンショックや東日本大震災の発生時もダメージが少なく、回復に要した時間も短かったことから、ショックに強い安定資産であるといえます。
テレワークやネットショッピングの普及によってコロナ後も生活を自宅で完結させるニーズが根強く残る可能性が大いにあります。
不動産投資家はマーケットで求められているものを常に見極め、自身の投資方針をアップデートさせ続けていかなければいけません。
都心部ほどマーケットの変化が速いため、最新の情報を集めるにあたっては都心部の不動産マーケットを熟知した不動産業者に相談するのが得策です。
なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等については、お気軽にお問い合わせください。
弊社は日本の都心不動産の取り扱いに特化しており、最新の良質な情報を取り揃えてお客様をお待ちしております。国内外を問わず、都心部の不動産への投資をお考えの方は是非一度弊社にご相談ください。