不動産投資で物件選びをする際の最も重要な点として、立地、間取り、築年数といった要素がありますが、これらと並んで重要なのが資金計画です。
資金計画とは、投資としての収益性を測るために物件の長期的な運用収支を見積もった計画を指します。資金計画では、月間ないし年間のキャッシュフローおよび売却時の損益をシミュレーションすることで、その投資において最終的にどの程度の収益を上げられるかが見積もられます。
日本で物件選びをするにあたって、資金計画に関して以下のようなことを感じたことはないでしょうか?
・不動産業者に提示された資金計画が信頼できる精度か不安
・自分でも資金計画を立てられるようになりたい
・立地が良い築浅の物件だが収益性が低い物件ため、投資するか悩んでいる
本記事では、日本での不動産投資において正確な資金計画を自ら立てる、または不動産業者が作成した資金計画を自ら精査することができるようになるために必要な3つの要素について解説します。
1-正確な資金計画に必要な3つの要素
┗1-1物件の価格変動
┗1-2家賃収入の変動
┗1-3コスト(固定費・変動費)
2-物件選びは資金計画が生命線
3-まとめ
日本での不動産投資において、正確な資金計画を自ら立てる、または不動産業者が作成した資金計画を自ら精査することができるようになるために必要な要素は以下の3つです。
■物件の価格変動
■家賃収入の変動
■コスト(固定費・変動費)
月間ないし年間のキャッシュフローおよび売却時の損益に影響する上記3つの要素について、正しい知識と一般的な相場感覚を身に付けましょう。
物件の価格変動とは、物件を購入した後の価格変動のことで、売却時の損益に関する要素です。
資金計画に物件の価格変動を織り込む際には、日本不動産における価格変動の要因を勘案し、物件価格が上がるシナリオと下落するシナリオを想定しておくといいでしょう。
日本のマンション価格は一般的に、新築物件でなくなった時点で建物価格の2割程度下落し、その後は築年数の経過とともにほぼ一定のペースで下落が進み、20年目前後で下げ止まりを迎えるというデータがあります。
新築や築20年以内の物件に投資をする際は、年間2%前後の価格下落をするというシナリオの資金計画を立てておくのが無難でしょう。
一方で、国土交通省の発表によれば、日本の不動産価格指数(区分所有マンション)は安定的な右肩上がりで推移しており、2010年から2021年にかけて60%以上も上昇(年間約6%の上昇率)しているというデータもあるため、購入後に築年数が経過しても価格が上昇するというシナリオの資金計画を立てることもできるでしょう。
築年数が経過した物件であっても、室内のリフォームやリノベーションによって設備を最新鋭のものにアップデートしたり、間取りを変更したりして資産価値を維持することも十分に可能です。
直近10年間の不動産価格指数の上昇やリフォーム・リノベーション技術の向上に鑑みるに、築年数の経過に比例して価格の下落が進行することを過度に懸念する必要はないといえそうです。
家賃収入の変動とは、築年数の経過や周辺環境の変化等による家賃収入の変動のことで、月間ないし年間のキャッシュフローに関する要素です。
家賃収入は築年数の経過とともに下落していくのが一般的です。三井住友トラスト基礎研究所によれば、東京23区における理論賃料指数の下落率は以下の図のように築10年目までが最も大きく、それ以降は緩やかになっています。
投資する物件の築年数および面積に応じて、以下のような割合で家賃が下落するというシナリオの資金計画を立てておくのが無難でしょう。
・新築または築10年以内:2%前後/年
・築11〜20年:1%前後/年
・築21年以上:0.5%前後/年
一方で、株式会社東京カンテイの調査によれば、全国主要都市の2015年から2021年(6月時点)までの分譲マンションの賃料(㎡単価ベース)は以下の表のように推移しています。
東京23区 | 横浜市 | さいたま市 | 千葉市 | 大阪市 | 神戸市 | 名古屋市 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
変動率(%/年) | 2.9% | 3.0% | 2.8% | 3.3% | 2.6% | -0.1% | 3.2% |
神戸市は微減となっていますが、その他の都市では年間3%前後の割合で上昇しており、日本の主要都市では底堅い賃貸需要に下支えされて家賃が上昇傾向にあるといえそうです。
物件を所有するエリアによっては、築年数が経過しても家賃収入が増加するシナリオの資金計画を立てることもできるでしょう。
コストとは、物件運用中にかかる固定費および変動費のことで、月間ないし年間のキャッシュフローに関する要素です。
固定費とは、定期的に発生するコストのことで、発生頻度は毎月・毎年・数年に一度と項目によって異なります。変動費とは、不定期に発生し、発生頻度および金額を正確に予測するのが困難なコストです。
物件運用中にかかるコストを固定費および変動費のそれぞれ分類すると以下の表の通りになります。
固定費 | 変動費 | |
---|---|---|
費用項目 | ・ローン返済および利息 ・管理委託料 ・税金(固定資産税、都市計画税) ・損害保険料 ・管理費および修繕積立金(区分マンション) ・共用部分の電気代および水道代(一棟物件) | ・退去費用 ・入居者募集費用 ・修繕費 |
物件運用中のコスト割合(諸経費率)は一般的に10〜20%が目安とされていますが、築古物件では修繕費が、地方の物件では入居者募集のための広告費が思いの外高くなり、コスト割合が20%を超える可能性も十分にあり得ます。
投資する物件の築年数、エリア、過去の修繕状況等の要素を加味して、コスト割合が上振れするリスクに備えた資金計画を立てましょう。
不動産投資の目的は収益を生むことであるため、資金計画を正確に立てることができるかが生命線といえます。
立地が良い築浅の物件でも収益性が低いならば投資を見送る、地方の築古物件でも賃貸需要が旺盛で収益性が高いならば投資をするのが賢明な判断でしょう。
エリア選びや物件選びも非常に重要な工程ですが、その物件に投資をするべきか否かという最終的な判断において最も重要な基準となるのは、資金計画に基づいた収益性の良し悪しです。
正確な資金計画を自ら立てる、または不動産業者が作成した資金計画を自ら精査することができるようになることは、賢明な投資判断をするために必要不可欠なスキルの一つといえます。
日本での不動産投資においては、物件選びをするうえでの資金計画が最も重要な要素であり、生命線です。
賢明な投資判断をするためには、思わぬ家賃下落やコストの上振れといった収支の変動要因を見越して正確な資金計画を投資家自らが立てられる、または不動産業者が立てた資金計画を精査できるようにしておくことが必要です。
物件価格・家賃収入・コストのそれぞれについて、正しい知識と一般的な相場感に基づいてグッドシナリオとバッドシナリオを想定した複数の資金計画を立てておくことで、投資の安全性を高めることに繋がります。
なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等についてはお気軽にお問い合わせください。