不動産投資をするに当たっては、各投資エリアの特徴を理解し、当該エリアにおけるルールに従う必要があります。
同じアジアの大都市といえども、香港と日本では地理的な面や不動産価格の成長率、税制といった様々な点で不動産投資をするうえでの環境が大きく異なるでしょう。
そこで、本記事では不動産投資をするうえでのベースとなる観点から、香港不動産と日本不動産の比較を行います。
index
1-香港と日本の前提的な2つの違い
┗1-1地形
┗1-2公用語
2-香港不動産と日本不動産を6つの観点から比較
┗2-1平均価格
┗2-2価格成長率
┗2-3利回り
┗2-4土地の使用形態
┗2-5土地と建物の個別性
┗2-6賃料に上乗せされる費用
3-まとめ
香港と日本では、以下の2つの点において前提的な違いがあり、その違いが不動産投資のマーケットや環境のベースにも少なからず影響を及ぼしているといえるでしょう。
投資をするうえでのベースが異なれば、購入する物件の理想像や狙うキャッシュポイントといった投資方針も異なるため、香港不動産と日本不動産を比較する際の背景として理解しておくのが得策です。
■地形
■公用語
香港の地形は、多くが山岳地帯であることから、住宅の開発が困難なエリアも多く存在します。
土地全体に占める山岳地帯の割合が大きいということは、平坦な土地が相対的に少なくなるため、住宅の開発やニーズは限られたエリアに集中しやすいと考えることができるでしょう。
特定のエリアにおける限られた供給に対して多くのニーズが集中することで、同エリアにある住宅価格が高騰した結果、香港不動産は世界で有数の高額不動産になっているともいえそうです。
日本の首都である東京は、平野部に位置していることから山岳地帯は多くありません。
平坦な土地が多いということは、山岳地帯が多いエリアよりも住宅を開発しやすい土地の割合が多いということであるため、東京においては住宅の開発やニーズが局所に密集するということは少ないと考えられます。
実際に東京23区の人口密度は各区の間で大きな差はないことからも、東京においては住宅の開発やニーズが特定のエリアに一極集中しているとはいえないでしょう。
香港は1997年に中国に返還されるまで、155年間に渡ってイギリスの支配下にあったことから、広東語の他に英語も公用語の一つとされています。
日本の公用語は日本語のみであるため、広東語はもちろんのこと、英語を使いこなせる人の割合も香港と比べると低いでしょう。
日本人以外の投資家が日本不動産への投資を検討するに当たっては、多言語でのサービスを展開している不動産業者に仲介を依頼する必要性が高くなります。
ともに世界的な大都市といえる香港と日本では、不動産においてどのような差異が見られるのでしょうか。香港不動産と日本不動産を以下6つの観点から比較します。
■平均価格
■価格成長率
■利回り
■土地の使用形態
■土地と建物の個別性
■賃料に上乗せされる費用
CBREにおいて、香港不動産の平均価格は$1,254,442で、2019年に続き世界で最も高額であるというデータが示されました。
世界の主要な大都市の平均価格は、シンガポールで$915,601、ニューヨークで$649,026、ロンドンで$624,225という結果であり、香港不動産が世界中でいかに高額であるかが分かります。
$1,254,442は1ドルを100円で換算すると1.2億円以上であり、日本のマンションや土地付注文住宅の平均価格が首都圏でも5,000万円前後であることからすると、香港不動産と日本不動産では平均価格に大きなギャップがあるといえるでしょう。
株式会社日本不動産研究所の調査結果によれば、2010年10月を100とする世界各都市のマンション価格指数は、2020年10月時点において東京で115.8(10年間で15.8%の成長)、香港で161.5(10年間で61.5%の成長)です。
2010年からの10年間における成長率は香港と東京で4倍近くもの差があり、長期間に渡って保有するほどキャピタルゲイン(売却益)に大きな差が開く可能性が高いといえるでしょう。
Global Property Guideの調査によれば、中心街に位置する典型的な住宅の利回りは香港で2.35%(130㎡換算・購入価格が$3,714,113・月額賃料が$7,267)、東京で2.66%(120㎡換算・購入価格が$1,958,640・月額賃料が$4,346)となっています。
1㎡当たりの単価は、購入価格では香港が東京の1.75倍、月額賃料では香港が東京の1.54倍と差があるものの、利回りで見れば大差はないといえるでしょう。
香港では、土地は香港政府が所有するものであるため、不動産デベロッパー等であっても土地を使用する際は香港政府と賃貸借契約をすることになります。
日本では、個人でも土地の所有をすることが認められているため、原則として誰でも自由に土地を取得・所有できます。
土地を所有できるか否かは、不動産ビジネスの幅に影響を及ぼすでしょう。
土地の所有が認められていれば、土地の売買を通じてキャピタルゲインを得ることができるためです。
不動産の活用方法における選択肢やビジネスチャンスの幅の広さという観点では、土地を自由に所有できる日本の方が有利になる場面が多くあるかもしれません。
香港では、建物は土地の付着物という考え方の下、土地の一部として扱われるため別個の不動産とは扱われません。
日本では、建物と土地は別個の不動産であり、両者を別々に処分することができます。
建物と土地が別個であることで、いずれか一方のみを担保としたり譲渡したりという機動的な不動産活用ができるため、日本不動産の方が自由度の高い運用ができる場面が多くあるかもしれません。
香港においては賃料の支払いとは別に、以下3種類の費用がかかります。
・マンションの管理費
・ガバメントレイツ
・ガバメントレント
ガバメントレイツとは、不動産税のことで、政府が設定した年間賃料(実際の賃料と異なる)の5.5%を3ヶ月に1度のペースで支払います。
ガバメントレントとは、土地使用税のことで毎年1回のペースでガバメントレイツと併せて請求がきます。
日本では、ガバメントレイツやガバメントレントのように住宅を借りることに対する税金はかかりません(オフィスを借りる場合は賃料に消費税がかかります)。
日本での不動産に係る税金(固定資産税や都市計画税等)は原則として所有者が負担することになっており、香港のように賃借人に負担させることはできません。
香港不動産は価格が高いため、一定の資力や融資を受けられるだけの社会的信用がないと購入が難しいというデメリットがある反面、高い価格成長が見込めるため安定的なインカムゲイン(賃料収入)を確保しつつ、キャピタルゲインが大きく狙える可能性があるというメリットがあります。
日本不動産は高い価格成長が見込めないため、キャピタルゲインよりは安定的なインカムゲイン狙いの投資になるというデメリットがある反面、世界的にみると価格が高すぎないため、小資本でも購入ができたり、複数所有によってリスクを抑えた分散投資がしやすかったりするというメリットがあります。
なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等についてはお気軽にお問い合わせください。