初心者の不動産投資家が陥りやすい失敗例の一つとして、高い利回りばかりに魅力を感じるあまり、買うべきではない物件を買ってしまうというケースがあります。
利回りの高さ以外の判断基準を持つために知っておくべき、利回りが高くなる理由や背景および高利回りでも買うべきではない物件の特徴を7つの観点から解説します。
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1-なぜ高利回りになるのか?
2-高利回りでも買うべきではない物件の特徴7つ
┗2-1賃貸需要が少ない
┗2-2耐震性が低い
┗2-3施工不良の可能性がある
┗2-4心理的瑕疵あり
┗2-5入居者の属性が悪い
┗2-6土地の形状が悪い
┗2-7管理組合が機能していない(区分マンションの場合)
3-まとめ
投資において利回りが高くなる大きな理由の一つに、ハイリスクな投資であるという点が挙げられます。投資のリスクとリターンは表裏一体の関係にあるため、利回りというリターンが高いということは、リターンに比例してリスクも高くなるのが一般的です。
ハイリスクな投資商品には、投資家からの資金を集めるためにリターンを高くせざるを得ない場合が多くあります。新興国の定期預金の利率が先進国よりも高かったり、新興国の株式や債券が先進国よりもハイリターンであったりするのは、新興国にはカントリーリスクや為替リスクといったリスク要因が先進国よりも多いことが原因の一つとして考えられます。海外の企業や投資家からのマネーを自国に誘引するためには、リスクに応じたリターンを提示する必要があるということです。
不動産投資に置き換えると、高利回りである物件には高いリターンに見合うだけのリスクがある場合が多いでしょう。実際、高利回りである物件は地方の過疎化が進んでいるエリアにある物件や築年数が40年以上も経過している築古物件などに集中している傾向があります。
高利回りの物件を検討する際は、なぜ利回りが高いのか、どのようなリスクが潜んでいそうかといった視点を持ちながら慎重に吟味するのが得策です。
高利回りというハイリターンが見込める物件は、一見すると投資家には魅了的でしょう。特に不動産投資を始めて間もない投資家の間では、高い利回りばかりに目がいき、ハイリターンの裏に潜むリスクを看過して、買うべきではない物件を買ってしまうという失敗例が後を絶ちません。
数千万円以上の借金をして、買うべきではない物件を買ってしまうと、投資家として再起不能なレベルの失敗に繋がることも考えられます。不動産投資で大きな失敗をしないために、買うべきではない物件の7つの特徴を把握しておきましょう。
■賃貸需要が少ない
■耐震性が低い
■施工不良の可能性がある
■心理的瑕疵あり
■入居者の属性が悪い
■土地の形状が悪い
■管理組合が機能していない(区分マンションの場合)
賃貸需要の少ない物件は、見かけ上の利回りが高くても買うべきではないでしょう。満室想定時の利回りが高かったとしても、満室の状態を実現できなければ高い利回りは絵に描いた餅といえます。不動産投資の主たる収入源は賃料収入であるため、賃貸需要の多寡は生命線ともいえる重要な事項の一つです。
人口減少が進んでいるエリアにある物件や築古の木造アパート、老朽化が進んだ物件などは一般的に賃貸需要が少ないため、満室想定時の利回りが高い状態で売りに出される傾向があります。満室想定時の利回りが高い物件を検討する際は、満室を実現・維持できるだけの賃貸需要のある物件か否かを判断基準の一つとして持っておきましょう。
耐震性が低い「旧耐震基準」の物件は以下2つの理由から買うべきではないでしょう。
・十分な耐震性を備えているとはいいがたい
・金融機関からの融資がつきにくい
耐震性とは、どれだけ強い地震の揺れに耐えられるかを測る指標をいい、旧耐震基準の物件は、1981年5月31日以前に建築確認の申請が受理された物件です。
旧耐震基準の物件の耐震性は、「震度5強程度の地震では、ほとんど建築物が損傷しない」という基準にとどまっており、強い地震の多い日本では十分な耐震性とはいえないでしょう。購入した物件が損傷したり倒壊したりすると、貸し出せないために賃料収入が途絶えるうえに多額の修繕費がかかる可能性があります。
耐震性の観点に加えて、旧耐震基準の物件には金融機関からの融資がつかないことも想定されます。損傷や倒壊のリスクがある物件を金融機関は担保として評価しないというのが大きな理由の一つです。
施工不良とは、設計図の通りに実際の工事がされていない状態を指します。施工不良の可能性がある物件は以下2つの理由から買うべきではないでしょう。
・耐火性や耐震性上の欠陥がある危険性が高い
・金融機関からの融資がつきにくい
天井裏や壁の奥などの見えない箇所で設計図とは異なる施工がされている場合には、延焼が早かったり、建物全体の強度が弱かったりする危険があります。実際、アパート建築業者やマンションデベロッパーが施工または販売した物件で、建築基準法に違反する施工を行っていたり、マンションが傾いたりした実例もあります。
施工不良の可能性がある物件は、火災や地震の際に入居者およびオーナー自身の生命・財産を大きく棄損し得るうえ、金融機関からの評価も低くなる可能性が高いため、投資対象として不適合といえそうです。
施工不良の可能性がある物件は、立地や築年数といった条件が良いにも関わらず高利回りで売り出される傾向があります。好立地かつ築浅でありながら利回りが高いといった好条件過ぎる物件には、ネガティブ材料が潜んでいる危険があるため要注意といえるでしょう。
心理的瑕疵がある物件とは、いわゆる事故物件を指します。自殺や殺人といった事件・事故が過去に発生したことのある物件です。
ネットで情報が一斉に拡散し、半永久的に残り続ける現代において、事故物件である情報が一度出回ってしまうと著しく回復困難なネガティブイメージが根付いてしまうといえるでしょう。事故物件は一般的に貸しにくく、かつ売りにくくなる傾向が強いため、投資するメリットは皆無であるといっても過言ではありません。
当該物件での事件・事故については、ネットで調べる、売主側に直接確認するという確認方法もありますが、マイソク(物件情報図面)の備考欄などに、「告知事項あり」という旨の記載がある場合は事故物件である可能性があるため、よく確認しておくのが得策です。
現入居者に問題がある物件は、購入後に問題が頻発するおそれがあるため避けるべきといえるでしょう。賃料を長期間滞納したまま夜逃げしたり、入居中にトラブルを頻繁に起こしたりする入居者が一定数いるのも事実です。
不動産投資において入居者は長い付き合いになる可能性のあるステークホルダーともいえるため、長期的スパンで良好な関係を築くことができるお客様であることが理想といえるでしょう。
物件を購入する前に、現入居者についての情報(過去の賃料滞納履歴やトラブルがないか)を売主側から聞き出しておくことが得策です。
一棟物件に投資することを検討している場合は特に敷地の形状には留意するべきでしょう。土地の形状が悪いと、将来的に売却する際や既存の建物を取り壊して建て替える際にネガティブな影響をもたらす場合があるためです。
旗竿地や袋地のように接道状況が悪い、または人や車両の通行が困難な土地に建っている物件は、現行の法律上建て替えができなかったり、工事に係る費用が高くなったりすることがあります。
土地の形状の良し悪しの判断については、建築基準法の専門的な知識が必要な場合があるため、専門家と現地を見ながら確認するのが確実でしょう。
区分マンションに投資をする場合、当該マンションの管理組合が機能しているか否かは重要な確認事項の一つでしょう。
分譲マンションには管理組合という各部屋の所有者で組織される団体があり、管理組合で物件の運営に係るあらゆる事項が協議・決定されます。管理組合で協議される事項の中には、マンション全体の日常的なメンテナンスや大規模修繕といった建物の価値に関係するものも含まれているため、管理組合が機能しているか否かは重要といえるのです。管理組合が正常に機能していないと、マンションの維持管理が適切に行われていない可能性があるため、長期的に資産価値を維持できなくなるという事態も想定されます。
管理組合の状態を確かめる手段の一つとして、「重要事項に係わる調査報告書」を参照するという方法があります。同書には管理費および修繕積立金の滞納状況や管理組合の借入金の有無、大規模修繕の予定といった当該マンションの運営方針が記載されています。売買仲介業者経由でマンションの管理会社から仕入れることができるため、購入前に一読しておくといいでしょう。
リスクとリターンが表裏一体の関係にある投資においては、高い利回りというリターンの背後には高いリスクが潜んでいることが往々にしてあり得ます。どのようなリスクがあり、どのようにすればリスクの有無を確認できるかを把握することで、買うべきではない物件を買ってしまう事態を避けられる可能性を高めることができるでしょう。
なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。より詳細な情報やノウハウ等についてはお気軽にお問い合わせください。